よく誤解されること・・・余命3か月の宣告とは

 「余命3か月と医師から宣告された」という表現をよく目にします。実はこれは大きな誤解なのです。
 死が目前に迫ってどうにも延命不可能になった状態を除き、人間の余命を宣告することなど誰にもできません。
 「現代医学では治せない癌です」と医師が説明すると、必ず「余命はどれくらいですか」と質問されます。その時、医師が「最悪3か月から1年」と言ったとすれば、3か月は死なないという意味です。
 余命を質問された医師は、どうしても最悪の経過を想定して伝えます。あと6か月大丈夫ですと言っておいて患者さんが3か月で亡くなったら主治医として立場がないじゃないですか。3か月は大丈夫と思ったら、余命は最悪3か月と言ってしまうのが人の心なのです。
 医師の方は「最悪3か月」と言っているのですが、告知を受けている方は平常心ではなく心が動揺していますから、どうしても「あと3か月の命だ」と誤解して受け取ってしまうようです。

 「3か月から1年」と言われたら、それは統計上多くの方が1年以内に亡くなるという意味かもしれません。しかし、すべての方が必ず1年以内に死ぬわけではありません。
 「医師から余命3か月と言われたのに1年たっても元気にしている」となると、「信仰のおかげだ」とか、「試している健康食品のおかげだ」とかいう話が出てきます。これも誤解です。信仰を否定しているわけではありませんよ。信仰など心のより所を持っている人の方が、迷いのない闘病生活を送れると思います。
 ここで指摘したいのは、同じ名前の癌でも余命はそれぞれ違うということです。
 癌細胞がお腹の中に散らばって癌性腹膜炎という状態になると、ほとんどの方は6か月以内の命です。しかし、まれではありますが、癌性腹膜炎の状態で何年も生きられる方があります。
 現代医学では治せないと診断することはできても、これからどれだけ生きられるのかは診断できません。統計や経験から推測することができるだけです。
 非常にまれなことですが、癌が自然に小さくなったり、なくなってしまう現象も報告されています。これまた信仰や健康食品の出番になることが多いのですが、奇跡ではありません。